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  • 父の健康を支えたもの・2

    父の健康を支えたもの・1の続き

     

    そして、私が中学に入ったころ、父は無事退院が出来た。

    しかし、自宅療養で一日中寝ていなければならない。

     

    小さい弟たちは、父の周りでいつも遊んでいた。

    2階に寝ていて、1階の店舗で母は忙しく働いていたが、

    父は動けないいらだちで、時々は機嫌が悪いこともあった。

     

    母は父が発病したころ、栄養について勉強を始めた。

     

    「私は栄養について何も知らなかった。結核には栄養が一番大事なのに。」

    そう言った母は女子栄養大学の通信教育を始めた。

    小学校しか出ていない母だが、向学心は強く、

    毎晩夕食が終わった後、台所のテーブルに教科書を開いて、

    ビタミンとか蛋白価とか、ブツブツ言いながら勉強していた。

     

    おかげで、家族も毎日栄養学を聞かされた。

    料理も自分で作って、感想を提出するので、

    おいしい料理ができるようになった。

     

    今までは、全くの田舎料理で毎日同じものばかり。

    八百屋へ行くと食べたことのないものが売っていて、

    なぜお母さんは作らないのだろう、いろいろ食べてみたいと思ったものだ。

     

    また、鶏がらのスープが身体によい、というので毎日母は作った。

    その鶏がらを買いに行くのは、私の役目で、

    毎日自転車で遠くの肉屋まで買いに行った。

     

    母はその時以来、毎日三食父のために食事を作った。

    父が83歳で亡くなるまで、実に50年以上一日もかかさず作ったのである。

     

    中身は毎日のことだし、店をやりながらのことなので、

    簡単だが栄養のバランスのとれたものである。

     

    朝は昆布と削りたての鰹節のだしの味噌汁、納豆、ぬかみそ漬け。

    昼は食パンと、牛乳、野菜と肉の炒め物、卵焼き。

    夕食は魚と煮物、青菜のお浸しなど。

     

    私が食に関心を持ち、その後薬膳を学ぶようになったのは、

    この時の母の影響が大きい。

     

    その当時、衣料品はとてもよく売れて、父も健康を回復してきた。

    私は大学の進路を80歳まで働ける仕事を、と考え、

    父も女性は資格を持ったほうが良い、と言い薬学部を選んだ。

     

    **次回に続きます**

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