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ありがとうは不思議な言葉
叱られても、注意されても、「ありがとう」と言う、若い薬剤師さんが
10年ほど前、ウエマツ薬局に勤めていたことがありました。
彼女が入る前、ウエマツ薬局には40代の元気なスタッフが大勢いて
バリバリ仕事をしていました。
忘年会などでは、お酒もいっぱい飲む元気いっぱいの人たちでした。
その人たちの中に、大学を出たばかりの若い薬剤師さんが入って行って
うまくいくだろうか、と心配していました。
ところが心配無用。
彼女は何でも「ありがとう」といいます。
叱られても注意されても、絶対に口答えしたり、言い返したりしません。
自分の正当性も主張しません。
まず「ありがとうございます」
多分、ご両親の教育のためだと思われました。
そうしましたら、お店のスタッフたちが、すっかり敬服して、
「うちの嫁に欲しい」などと言い出す位でした。
ありがとうは魔法の言葉です。
注意されたり、叱られたりすると言う事はありがたいことです。
たとえ自分のほうが正しいと言うことがあったにしても
その正当性が認められないという事は
どこか未熟なところがあったわけです。
その未熟なところを注意してくれた、と言うことを感謝して
「ありがとうございました」と言う表現に出たと思います。
彼女が店をやめて実家の薬局に戻った時、一人のお客様がおっしゃいました。
「僕は、あの人とは話をしたことがなかったけれど、顔を見ているだけで癒されました」と。
もう10年以上前の話ですが、いまだにウエマツ薬局の中に彼女の精神は生きています。
私も彼女に見習ってなんでもすべて「ありがとうございます」と感謝するようにしています。
いやなことでも辛い事でも、すべて試練は困難を乗り越えるバネとなり、
人間性を深めてくれます。
そういうことに関して、ただ怒っているだけでは、負の感情だけ残ってしまいます。
しかし、「鍛錬してくれてありがとう」と思うと、逆に感謝の気持ちにかわります。
写真:ウエマツ薬局