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父の健康を支えたもの・3
父の健康を支えたもの・2の続きです。
家は静岡で、大学は男子は東京へ行く子が多かった。
弟二人が後に控えて、私が進学するのは経済上厳しかったが、
「結婚費用はいらないから。」
と言って無理に大学へ行かせてもらった。
薬学部を卒業後、中医学(漢方のこと)を学び、予防が大事だと分かった。
父は結核をしているので肺が弱い、
将来肺炎、肺がんになる可能性もある、と考え
高価だが冬虫夏草を10年、実家に送って父と母に飲んでもらった。
冬虫夏草とは、蛾の幼虫に寄生するキノコの一種で、
肺を丈夫にし、免疫力を上げる優れた漢方生薬である。
乾燥したものはマッチ棒のようなので、一日一本、味噌汁に入れて煮て飲んでもらった。
そのおかげか、二人とも全く風邪をひかず、肺がんにもならなかった。
しかし、父は胃がんになった。
肝臓に転移し、腹水がたまった。
病院で出る利尿剤では、尿がたくさん出るだけで、腹水には効果がでない。
そこで、漢方薬を飲ませたら、すっと引いていき、父も喜んだ。
しかし、あるとき医師に呼ばれ
「がんが肝臓いっぱいになっています。
相当苦しいはずですよ。」
「お父さん、苦しい?」
「苦しくないよ。」
そういって看護師さんが酸素吸入の圧を上げたのを
「そんなにしなくていい。」
と下げさせた。
その翌朝、付き添って寝ていた母が気付かない位、
苦しまずにあの世に旅だった。
結核で、生きるか死にかの大病をしたのに、
海外旅行へ何度も行き、平均寿命より長生きした父。
戦争で苦労をしたが、後半生は母のおかげで
健康に幸せにすごした父でした。
母の50年にわたる一日三度のバランスのよい食事が、
なにより父の健康を支えたのだろう。
そして私の漢方の知恵も、ちょっぴり手助けしたかな、と自負している。
2017年1月 植松光子