せきは、原因様々、正確な診断を

咳は、のどから肺へつながる「気道」内の異物や分泌物を外に出す防御反応です。

咳が続く原因は感染症が多いが、普通の風邪であれば3週間程度でほとんど軽快します。
これが8週間以上続き、問診や胸の聴診、エックス線などの一般的な検査では原因が分からない場合
「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼びます。

日本呼吸器学会の「咳嗽に関するガイドライン第2版」(2012年刊)は、慢性咳嗽を招く主な疾患を三つ挙げています。

最も多いのが「せきぜんそく」

慢性的なアレルギー性の炎症で気管支が収縮しやすくなった状態で、一般的なぜんそくと違い、
呼吸困難や独特なゼーゼーという音がない。
しかし、治療しないと約三割が本格的なぜんそくに移行するとされています。

治療は吸入ステロイドで炎症を抑えるのが基本で、必要な場合に気管支拡張薬なども併用します。
ぜんそくへの移行を予防するために、長期治療が推奨されています。

「吸入ステロイドを中断せず、1年から2年は続けて使うことが望ましい」と新実彰男・名古屋市大教授が話されています。
せきぜんそくと違い、気道の表面が過敏になってせきが続くものを「アトピー咳嗽」と呼びます。

抗ヒスタミン剤というアレルギー治療薬と、吸入ステロイドで治療します。
ぜんそくに移行することはないので、せきが治まれば薬をやめられます。

三つ目は、「副鼻腔(ふくびくう)気管支症候群」

鼻の奥の方にある空洞(副鼻腔)の炎症と合併した気管支炎で、マクロライドという抗菌薬が有効です。

他に胃酸などが食道に逆流してせきを引き起こす症例も増えています。
これらが重なっている例もあります。

一方、「慢性気管支炎」という病名もよく使われますが、これは、
「たばこや大気汚染が原因の炎症」に限定するというのがガイドラインの立場。
薬より、禁煙など、原因となる刺激物との接触を断つことを優先します。

藤村政樹・国立七尾病院長は、「有効な治療法を選ぶためには、正確な診断が必要不可欠」と言われています。

ガイドラインはまた「せき止め」を安易に使わないよう呼びかけています。
せきを止める効果がないことが多いうえ、本来必要なせきを抑えるので、
誤嚥(ごえん)性肺炎につながりかねないからです。

2013年3月朝日新聞記事参考

中医学(漢方)の考え

中医学では咳の原因を治しながら咳を止めますので、慢性の場合は効果的です。

西洋医学の診断も参考にしながら、乾燥からきたもの、痰が多いもの、痰が粘って出にくいもの、
胃腸虚弱からきたもの、神経疲労からきたもの、などと分類し、それぞれあったものを飲んでいただきます。

西洋医学では「咳止め」を安易に使わないように言われますが、
中医学ではむしろ漢方薬を早く飲んだ方が気管支や肺を傷めないので、おすすめします。

漢方薬としては、麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)、麻杏止咳(まきょうしがい)エキス、
清肺湯(せいはいとう)、神秘湯、潤肺糖漿(じゅんぱいとうしょう)などがあります。

咳以外の症状も遠慮せずお話しして、漢方専門の薬剤師に相談してください。

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